リサイタル後半は、フランツ・レハールの歌曲から始まります。
レハールと聞いて、まず思い浮かぶのは《メリー・ウィドウ》をはじめとする華やかなオペレッタではないでしょうか。
私自身もこれまで《メリー・ウィドウ》ではハンナ、ヴァランシェンヌを演じるなど、舞台作品を通してレハールの音楽に親しんできました。
けれど今回のリサイタルで取り上げるのは、オペレッタではなく「歌曲」です。レハールは舞台作品とは別に、多くの歌曲を残しています。
今回楽譜を探し、作品について調べていく中で興味深かったのは、そこに当時のヨーロッパの空気が、とても鮮やかに映し出されていることでした。第一次世界大戦を経た1920年代。
レハールはオペレッタでは次第にシリアスな作品へと向かっていく一方、歌曲では、美しい旋律とともに当時の大衆文化を取り入れた軽やかな作品も書いています。
ワンステップ、フォックストロット、タンゴ――。
当時流行していたダンスのリズムが音楽の中に入り込み、街の賑わいや人々の息遣いまで聞こえてくるようです。
今回演奏する《Sári》もそのひとつ。楽譜には Tanzlied (Onestep)――「舞踏歌(ワンステップ)」と記されています。
一方で、時代が1930年代の終わりへと進むと、レハールの音楽を取り巻く世界にも大きな影が差し始めます。
今回演奏するもう一曲、《Sehnsucht, heimliches Verlangen》が書かれたのは1939年。
第二次世界大戦が始まった年です。
資料には、この作品が「離れ離れになった友人たちへの憧れ」を映したものと記されています。
華やかに踊る1920年代。
そして、戦争の影がヨーロッパを覆っていく1930年代の終わり。
同じレハールの歌曲でありながら、その間には時代そのものの大きな変化があります。
今回のリサイタルでは、
《Sári》
《Ging da nicht eben das Glück vorbei?》
《Sehnsucht, heimliches Verlangen》
の三曲を演奏します。
華やかで軽やかな音楽の奥にあるもの。そして、時代の移り変わりとともに変化していくレハールの表情。
三つの歌曲を通して、オペレッタだけではないレハールの世界をご紹介したいと思います。
次回から、一曲ずつ紐解いていきます。
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