「光と影のあいだに」No.16-《Sári》-One-Stepに乗せて

今回ご紹介するのは、フランツ・レハールの歌曲《Sári》。
楽譜にはタイトルの下に、
Tanzlied (Onestep)-舞踏歌(ワンステップ)と記されています。

One-Stepは、20世紀初頭にアメリカで大流行した社交ダンスのひとつ。
その名の通り、一拍ごとに一歩ずつステップを踏む、とてもシンプルな踊りです。軽快なリズムに乗って男女がペアで踊り、1910年代にはアメリカだけでなくヨーロッパにも広がっていきました。

《Sári》にも、そんなダンス音楽らしい躍動感が曲の最初から溢れています。ピアノが刻む軽快なリズムに乗って登場するのは、黒い瞳のジプシー娘、Sári。

彼女の美しさに心を奪われた男たちの姿が、生き生きと描かれていきます。音楽は明るく、華やかで、どこか芝居がかっていて。

聴いているだけで、人々が集い、音楽に合わせて踊る賑やかな光景が目に浮かぶようです。そして華やかさの奥に、ふと顔をのぞかせるジプシーの郷愁。軽快に進んでいた音楽が熱を帯びていくにつれて、ハンガリーの民族舞踊チャルダッシュを思わせるような、眩しいほどの華やかさも感じられます。

アメリカからやってきたモダンなOne-Stepのリズム。
そこに重なる、レハールの中に流れるハンガリーの色彩。

異なる二つの世界がひとつの音楽の中で出会っているところが、《Sári》の面白さなのかもしれません。

リサイタルの後半は、そんな軽快なステップから始まります。

One-Stepに乗せて、レハールの華やかな世界へ。

目次