「光と影のあいだに」No.13-誰もいない隣の部屋で

第三曲《誰もいない隣の部屋で》は、どこかミステリアスな雰囲気をまとった、語りかけるような音楽から始まります。

その下で揺れ動くピアノも、どこか捉えどころがありません。林光がまだ20代の頃に書いたこの作品。
その響きに耳を澄ませていると、私はどこかドビュッシーを思わせる色彩や、輪郭をあえて曖昧にしたような音の感触を感じます。

はっきりと何かを描くのではなく、光の加減によって少しずつ姿を変えていくような音楽。

誰もいないはずの隣の部屋。
なのに、そこから誰かが呼んでいる。しかも、その声は

「まるで私のように」。

自分と同じ声で、自分を呼ぶ誰か。ドッペルゲンガー?

そんな少し不気味な想像も浮かびます。

そしてどこかから「陽の落ちる音」が聞こえてくるように感じられます。もちろん、太陽が沈むことに音はありません。

けれど林光のピアノからは、光が少しずつ失われ、時間が刻々と過ぎていく、その気配そのものが聞こえてくるようなのです。

夕暮れに照らされた私の影。

その影がいつしか、私と同じ姿をした「もう一人の私」のように見えてくる。

現実なのか、幻想なのか。
自分なのか、自分ではない誰かなのか。

夕暮れという、昼でも夜でもない時間の中で、その境界まで少しずつ曖昧になっていく。

私はこの曲に、そんな不思議な世界を感じています。

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