夕暮れは大きな書物だ
すべてがそこに書いてある、、、
林光作曲 四つの夕暮れの歌の第一曲《夕暮れは大きな書物だ》は、夕陽が沈んでいく水面のきらめきのような、静かなピアノから始まります。
何かを強く主張するわけでもなく、ドラマティックな出来事が起こるわけでもない。
ただ、目の前にあるひとつの情景を、そっと切り取ったような音楽です。
夕暮れというのは、昼が終わり、夜が始まる時間です。けれど、その境目がどこなのかは誰にもはっきりとは分からない。
太陽が沈んだから終わりなのか。まだ空に光が残っているうちは昼なのか。
気づいたときには景色が変わり、いつの間にか夜になっている。
人の時間も、それに似ているのかもしれません。何かが始まった瞬間や、終わった瞬間を、そのときの私たちは知らないことがあります。
谷川俊太郎の言葉は、そんな時間まで「夕暮れ」というひとつの景色の中に置いているように思います。
林光の音楽も、多くを語りません。言葉を説明するように音楽をつけるのではなく、その言葉のまわりにある空気や沈黙まで、そのまま残している。
ページを閉じたのではなく、
その先にもまだ何かが書かれている。ただ私たちは、ほんの一瞬、そのページを覗いただけ。
そんな余韻を残して、第一曲は静かに閉じられます。
これから続く四つの「夕暮れ」。その最初のページを、そっと開くような一曲です。
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