今回は、レスピーギ《トスカーナ地方の四つのリスペット》の第二曲、《Venitelo a vedere ’l mi’ piccino(我が子を見に来てください)》です。この曲は、幼子への深い愛情をうたった民謡詩に基づく作品で、子守歌のように親しみやすく、母親が眠る赤ん坊を誇らしげに友人や近所に見せているような光景が浮かびます。わたし自身にも二人の娘がおり、眠る我が子の美しさ、愛らしさを自慢したいほど、母性と愛情で胸がいっぱいになる経験があります。言葉では言い表せないほどに甘く狂おしい感情です。その感動は一生忘れないほど胸に刻まれています。我が子が、神様が自分に与えてくれた天使のように思える…その経験を活かしこの曲を歌う時には母親の愛のあたたかさを表現できればいいなと思います。
歌詞と対訳
原詩(イタリア語 / 詩:Arturo Birga)
Venitelo a vedere ‘l mi’ piccino
Or che nella culla è addormentato:
Venitelo a veder com’è carino,
Pare un angiol di Dio dal ciel calato!…
Angioletti del ciel,venite in coro,
A sorridere al dolce mi’ tesoro.
Venite… Zitto! Ha mosso ‘l labbro al riso…
Sognando,ora è con voi,su ‘n Paradiso!
日本語対訳
来て 見てちょうだい あたしの坊やを
今 揺りかごの中で眠っているの
来て 見てちょうだい どれほどかわいいのかを
まるで神さまのお使いのようよ 天から降りてきた!...
天国の天使さまたち 揃って来てちょうだい
ほほ笑みかけるために あたしの愛する宝物に
来て...静かに!唇を動かして笑ってる...
ゆめを見てるの 今あなたたちと一緒に天国にいる!
旋律は子守歌のように柔らかく、母の語りかけをそのまま音にしたかのようです。シンプルで親しみやすいフレーズが繰り返され、伴奏は素朴で優しい揺れを保ちながら歌声を包み込みます。音楽全体が愛情に満ちていて、日常の小さな仕草―赤ん坊の微笑みやえくぼ―をそのまま響きに変えています。
《Venitelo a vedere ’l mi’ piccino》は、子どもの愛らしい仕草をそのまま歌にした小品です。そこには、誇らしさと慈しみ、そして日常の喜びが凝縮されています。華やかな劇場の場面からは遠く離れた、家庭の一隅で生まれる歌。レスピーギは民衆の生活のなかにある美しさを、音楽に映し出しました。
次回は、第三曲《Viene di là, lontan lontano(向こうから、遠く遠く風が来る)》を取り上げ、自然と人生の歩みを重ね合わせるような詩の響きを見ていきたいと思います。

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