オットリーノ・レスピーギ《トスカーナ地方の四つのリスペット》の第1曲、《Qando nasceste voi(あなたが生まれたとき)》は、生命の誕生を祝う詩に基づいた作品です。1918年ごろに作曲され、アルトゥーロ・ビルガが採集した民謡詩をテキストとしています。「あなたが生まれた時…」と我が子に向かって語りかけます。「お花さんも鳥さんもお星様もみんなあなたが生まれた時、祝福してくれたのよ!みんな、自分のいいところをお前にあげたいって、、だからこんなに美しい子になったのよ」と、溢れんばかりの母親の喜びを、絵本を読み聞かせるように描かれています。
歌詞と対訳
原詩(イタリア語 / 詩:Arturo Birga)
Quando nasceste voi,disse la rosa:
“Vo’ dare alle tue gote il mio colore,”
E ‘l giglio:
“Anch’io vo’ darti qualcosa: ti darò la purezza e ‘l mio candore…”
La colomba li udì così parlare e smise tutt’a un tratto di volare…
“Oh,voglio darti qualche cosa anch’io:ti darò la mitezza del cor mio!”
Sentirono,di sù dal ciel,le stelle e dissero anche loro tutte ‘n coro:
“Noi daremo alle tue pupille belle la nostra luce…”
E ‘l sole:
“Io darò l’oro del mio colore a tuoi biondi capelli…”
E l’usignolo primo tra li augelli:
“Darò alle tue parole l’armonia del canto ch’esce dalla gola mia!”
日本語対訳
お前が生まれた時 バラがこう言った:
「あなたの頬に私の色をあげたいわ」って
するとユリの花が:
「私も何かあなたにあげたい 清らかさと私の無垢をあげましょう...」
ハトは花たちがそんな風に話すのを聞いて 突然飛ぶのを止めると...
「おお ぼくも君に何かあげたいな 君にあげよう ぼくの心の優しさを!」
空の上でそれを聞いていた星たちも こう言ったのだ 声を揃えて:
「私たちもあなたのきれいな瞳にあげましょう 私たちの光を...」
するとお日さまは:
「わしはこの金色をあげよう このわしの色を お前のブロンドの髪に...」
それからナイチンゲールは 鳥たちの中から最初に:
「ぼくは君の言葉に調和をあげましょう ぼくの喉から紡ぎだされる歌声の!」
この曲は、民謡らしい親しみやすい旋律を持ちながら、和声にはレスピーギらしい色彩感覚が光ります。各行ごとに異なる「贈り物」が提示されるとともに、音楽も小さな変化を積み重ねて、花や鳥や星が加わるたびに輝きが増し、シンプルながらも生命力にあふれ、まるで春の空気の中に祝福が次々と広がっていくような曲です。母親が子供に向かって、誕生の感動と喜びを自然界すべてに祝福されている誇らしい気持ちを、優しくユーモアを交えて歌いたいと思います。
《Quando nasceste voi》は、生命の誕生を祝うと同時に、自然の力が新しい命に寄り添うことを示しています。バラの頬の色、ユリの白さ、星の光、太陽の輝き、そして鶯の歌声。この喜びに満ちた第一曲は、《四つのリスペット》全体の扉を開くにふさわしい、生命力と希望にあふれた一曲です。
次回は、第2曲《Venitelo a vedere ’l mi’ piccino(我が子を見に来てください)》を取り上げ、幼子を見守る親のまなざしがどのように音楽となって表されているのかを探っていきます。

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